「時代はアナログ」覚えておきたい法則や式、考え方

概論の後にくる章で、アナログ的なモノの考え方をする時によく必要になる法則、理論、考え方を列挙してみた。これも、後からまた増えるかも(笑)。

●覚えておきたい法則や式、考え方

電子回路にはいくつもの法則や定番の式が存在するが、アナログ的にモノを考える場合に覚えておきたい法則や式を列挙する。いずれも、そう難しいものではないと思う。

1:オームの法則

すでに前述しているが、非常に有名な奴。E=IRって奴やね。この法則は通常E=IRと書かれるコトが多いので、電流と抵抗の積が電圧に一致するといった読み方しかしない人もいるかもしれないが、実際に回路で扱う時はR=E/IとかI=E/Rとして扱う事も多いので、三様の読み方ができるようになっておくと便利だろう。この辺は、算数とか数学でチャンと式の変換を覚えておかないと厳しいかもしれないが…。

2:電力の式

W=VAとかP=EIとか書く奴。通常、電力は電圧と電流の積で、これが実際のエネルギーというコトになる。力(音も実質的にはコレ)とか熱とか光とかに変換されるのは、基本的に電力に比例する場合が多い。各種の損失分を除けば、同じ電力を低い電圧で得るには大電流が必要で、逆に少ない電流で得るには高電圧が必要になる。いずれかがゼロの場合、反対側の項がどれだけ大きくてもゼロになる。またオームの法則と連動させると、抵抗が一定であれば、電力は電流の二乗に比例する。これも回路設計上では結構意識するコトになると思う。

なお、冒頭に通常と書いたのには理由があって、ここに交流理論が乱入すると、更に有効な電力と無効な電力というモンが存在する。が、これを理解するのには結構面倒な概念を知らないといけないのでここでは敢えて扱わない。

3:キルヒホッフの第一法則(電流則)

回路上のある一点に流れ込む電流の総和はゼロになるって奴。正確には、吐き出される方をマイナスと考えての合計ってコト。つまり、電流はどこからも急に増えるコトはなく、また急に減りもしないというコト。回路が分岐すれば必ず二手に分かれるし、分かれた合計は元の電流に等しい。非常にシンプルな法則なんだけど、この事はノイズを考える上で非常に重要な意味を持つ。

まぁ、電流が電子の流れであるって考えれば当たり前の話なので、それが急に増減してるなら、どっかから流れ込んでいるか逆に漏れてるってコト。なのでその場合、回路のショートを疑うベキやな。

4:キルヒホッフの第二法則(電圧則)

これは第一法則の裏返しで、回路中の任意のループ(途中にどんな部品が挟まっていてもよい。また枝葉があってもよい)の上にある全起電力の総和と、そのループ上のすべての負荷における全電圧降下の総和は等しい。この法則もノイズ対策の時に使うことが多い。

5:ファラデーの電磁誘導の法則

この法則は、ガチでやろうとすると何人もの現役高専生が爆発(笑)するぐらい大変なんだけど、サワリだけは知っておくとイイコトがある。すなわち、どんな導体でもそこに変化する磁力が交錯すると、起電力が発生する(=負荷を接続すれば電流が流れる)というコト。端的には、導線の周囲で磁石を振り回せば、その導線が閉ループになっていると電流が流れるというコトになる。発電機と言われるものの大半はこの原理で発電している。なお、磁力を出すものならなんでも成立するので、普通の磁石だけではなく電磁石によっても同様の現象が発生する。むしろ、こっちの方が色々と絡んでくる。

また、この法則を逆適用したものがモータになる。モータは、磁束が存在する場所にある導体に電流を流すと、導体にチカラが掛かる(導体が動こうとする)という法則を応用したものやな。

6:集中定数と分布定数

法則ではないのだが、アナログを扱う上では概念として非常に重要だろう。集中定数というのは、一般的な抵抗やコンデンサのように、明示的に値がハッキリしている電子回路要素(いわゆる電子部品)のこと。対して分布定数というのは、実際に実装された回路の配線材等が持つ抵抗やコンデンサ成分(容量成分)のこと。多くのケースでは分布定数は無視して作業するのだが、いくつかのケースで非常に気にしなければならなくなる場合があるので、この概念を知っておくことはとても重要やと思う。

目の前にある単なる配線が、実は抵抗成分やコイル成分、はたまた他の配線等との間にコンデンサ成分を持つと考えると、配線をぞんざいには扱えないよね。

7:ジュール熱

ジュールの法則という名前で知られている熱の発生のお話で、式としては「Q=RI^2t」…なんだけど、これは電力の式を当てはめた方が分かりやすいと思う。すなわち「Q=Pt」…そう、電力消費が発生する場所には、必ず熱が発生するんだな。そして、時間と共に熱量は増える。よくある「FETが燃えた」なんてのは、最終的にはコレが原因で燃えているワケだが、その対策を検討する上でこの法則は重要な意味を持っている。

8:フーリエ級数展開(フーリエ変換)

チョイと難しい数学の問題なのだが、概念的には「ある信号波形を、いくつかの正弦波の合成したものと考え、どんな正弦波が合成されたものかを求める」というお話である。音楽のアナログシンセサイザー辺りのお勉強をすれば、イヤでも覚えるコトになるお話やね。まぁ、この辺はチョイと放置しておいても構わないんだが、端的な例として矩形波(50%)は、元の周波数と同じ周波数の正弦波に対し、奇数倍の周波数の正弦波がその奇数分の一のレベルで合成されてできているというコトだけ覚えておいてもらえば、とりあえずはなんとかなる(笑)。

(この章、ここまで)