2004/Apr./23


●2004年4月23日 キャリパサポート

約一年ぶりにココを更新します。

仕事の都合でチョイと時間ができたので、大分前からほったらかしにしていたブレンボのカニをNSR50のフォークに取り付けるべく、細工を始めました。

手元にあるものはブレンボのカニ(シルバー)だけなので、あと取り付けるのに必要なものとしては

  • キャリパサポート
  • ブレーキパッド
  • ブレンボ用バンジョーボルト
  • 取付用ボルトナット

ってあたりになるかと思います。パッドやボルト類は購入したり手持ちの流用でなんとかなりますが、どうにもならないのがキャリパサポートです。買えば8000円ぐらいします。しかし幸い、手元にステップホルダを作った余りのアルミ板がまだあるので、これを使えば製作できそうです。で、今回自作サポートを作成すべく、採寸と図面の起こしをやってみました。

手順としては

  • 計測できそうなものは全部計測する
  • それを方眼紙の上に再現する
  • そこからサポートに最適な位置を割り出し、作図する

という感じになるかと思います。そこそこの精度を出すために、採寸は全てノギスを使い、かつ寸法の出ている場所(穴とかパッドのエッジとか)を基準にして測定してみました。

まずフォークの穴位置に関してですが、最初これを正確に計測するのはかなり難しいと思っていました。というのは、アクスルシャフトの穴とキャリパ穴2つは寸法が出ていますが、それらとフォークそのもののセンターラインとの関係がどうであるのかを計測する事は、フォークのボトムケースの外寸がいい加減なものであるために、基本的に不可能だからです。

しかしよーく考えてみると、今回製作するのはあくまでサポートですから、フォークのセンターラインとどういう位置関係になっているのかは基本的には関係がありません。ですから、これら3つの穴の間隔を計測し、そこからその三角形を図面上に再現できればヨシと考える事にしました。

穴のセンター間隔の計測方法ですが、当然穴なのでそのままではセンターはわかりません。しかし、ノギスで穴の一番離れた所同士の間を計測し、それぞれの穴の直径を計測すれば、以下の式で穴の間隔がわかることになります。

      穴の間の距離=最外距離−穴の直径/2−もう片方の穴の直径/2

それから、カニキャリパとマスタのレシオを確認する必要があります。今使っているのはNSR50のマスタで、これは直径が1/2インチのものです。一方、NSR50のキャリパピストンの直径は1インチで、これが二つあります。それぞれの面積を平方ミリ単位で計算すると

      マスタ面積=6.35×6.35×3.14=126.6mm^2

      NSRキャリパ面積=12.7×12.7×3.14×2=1012.9mm^2

一方今回のカニキャリパの場合、ピストンの直径は32mmですので

      カニキャリパ面積=16×16×3.14=803.8mm^2

となり、同じレシオにするには

      適正マスタ面積=803.8÷(1012.9÷126.6)=100.5mm^2

      適正マスタ直径=11.3mm

という計算で、11mmのマスタに変更する必要があります。1/2インチのままではレバーが固く、利きの悪いことになってしまいますので、これもどこかで見つけてこなければなりません。スクーター用がよさげですね。

あとは以下にメモと手順を掲載しますので、もし同じ方法でキャリパサポートを製作されるなら参考にしてください。なお、寸法は私の手元での実測ですので、結構誤差を含んでいると思います。その辺は各自で実測しなおして処理してみてください。

では、順番に解説します。以下の作業を全て方眼紙の上で作業します。

●フォークのキャリパ穴の位置

まず、車軸の中心点(右下のAXEL)を基準にして上と左に垂直と水平の基準線を引いておきます。実はほとんど役に立たないのですが、ま、目安程度と考えてください。

次に垂直基準線の左30mmの所に平行線を引きます。これがフォークのキャリパ穴の位置決めの一つですが、本物の寸法が30mmというわけではなく、あくまでアバウトです。理由は前述の通り、フォークとの関係を気にする必要がないからでず。

これ以降の作画は、この30mm離れた線と、AXELの中心点を基準に行います。

No.1の穴位置は、AXELからの距離が119.8mmであったので、AXELを中心に半径119.8mmの円弧を描き、これが30mm離れた線と交わる所とします。これでフォークの上側のキャリパ穴が決まりました。

次にNo.2の穴位置ですが、これはAXELから59.3mm、No.1の穴から95.3mmでしたので、それぞれからそれぞれの円弧を描き、これが交わった所とします。これでフォークの下側のキャリパ穴が決まりました。

●キャリパの寸法

次にキャリパの寸法を計測し、キャリパ穴の存在する半径を求めます。このカニタイプのキャリパは左右対称の形状なので、両方の取付穴は必ず同じ円周上に存在します。これを利用して、実測と計算で求めます。

図の左上にメモがありますが、必要なのはパッドの上下方向の当たり幅と、左右の穴間隔と、パッドと穴の上下方向の間隔です。これらとディスクの半径から、キャリパの穴位置を決める半径を算出します。

結論から言えば、かのピタゴラスの定理を使って計算できます。穴間隔の線とその垂直二等分線からなる二つの直角三角形を考えれば、キャリパ穴の半径はその三角形の斜辺になるからです。

穴間隔が84mmですから、三角形の一辺は42mmになります。次に、ディスクの半径110mmに対し、パッドを1mmほど内側に当てると考えると、AXEL中心からパッドの下辺までの距離は、パッドの上下幅が34.1mmなので

      110−1−34.1=74.9mm

となります。取付穴はパッドの下辺から10.4mm上方なので、三角形のもう一辺は

      74.9+10.4=85.3mm

となり、これらの数値から斜辺の長さを求めると

      斜辺^2=42×42+85.3×85.3

      斜辺=95.1mm

という計算になり、これがキャリパの穴が存在する半径になります。

●キャリパ穴位置

残念ながら、以上の結果だけでは最終的なキャリパの位置はまだ決まりません。後一つとして、キャリパをどのように取り付ければブレーキ時の力によってサポートが壊れないのかという事を検討する必要があります。極端な事を言えば、無用に長く延びたサポートだとブレーキングの時に破損するかもしれないわけですから。

基本的な考え方としては、以下のようなものが考えられるのではないでしょうか。もっとも、これらに関しては恐らく他にもいろいろな考え方があると思いますし、私自身応力解析ができるわけでもありませんので、自信があるわけではありません。

  • キャリパは回転しているディスクを挟んで止めるわけだから、必ず回転方向に大きな力がかかることになるので、これを真直ぐに受け止められるような形状のサポートを考える必要がある。
  • サポートのサイズとしてはできるだけ小さなものにする方が剛性が上がるハズ。
  • サポートが破壊する時には、恐らくキャリパが外方向へ移動しようとする力がかかっているハズ。
  • サポート材料の強度は、引っ張り強度よりも座屈強度(圧縮強度)の方が遥かに強いハズ。

できるだけコンパクトな形状と考えれば、キャリパをできるだけフォークに近付けることが最善の策となります。しかし、これだとブレーキ時の力はサポートを横に引き裂く方向に働いてしまいますから、あまりよろしくありません。

一方、二つのキャリパの穴の延長線上にフォークの上側の穴がくるような配置にすると、力の受け止めとしては一番真直ぐに受け止める事ができます。しかし、これだとサポートが大きくなり、またその関係でキャリパが外側へ逃げ出そうとする力に対しては若干弱くなるハズです。

以上の事から、その間を取ってフォーク側の二つの穴を結んだ線上にキャリパの上側の穴がくるように配置することにします。これだと、サポートはそこそこに小型化しますし、力のかかる方向は一応座屈方向になりますから。

つまり、No.1とNo.2を結んだ線と、キャリパの穴位置を示す円弧が交わった位置(No.3)が、キャリパの上側の取付穴位置となります。あとはこのNo.3から84mm離れた円弧を引き、それがキャリパの穴位置を示す円弧と交わった場所がNo.4の穴位置となります。

●サポートの厚み

板厚は手持ちの8mmですので変更できませんが、各穴を結ぶラインの幅は、キャリパやフォークに当たらない程度に太くしておくとイイんじゃないでしょうか。ウチでは24mm幅を基準とし、キャリパ取り付け部分周辺において20mm幅になるように調整してみました。市販のサポートが概ねこれぐらいになっているのが根拠なのですが、本当はもっと細くてもいいのかもしれません。

以上で、作図は完了しました。

●厚紙で試作

次に、作図した方眼紙から厚紙に寸法を写し取り、それを切り出して試作品を作ってみます。厚み1mmぐらいの厚紙は強度も結構あるので、とりあえずネジ止めしてキャリパを支えてみるぐらいなら充分に機能します。穴ももちろんドリルやポンチ等で正確に空けてやります。

これを実際にフォークに組み付けてみて、パッドが正しく予定通りの位置にいるか、変な当たりがないかをチェックします。この時にわかると思いますが、実はNSR50のキャリパ取付面とカニの取付面には若干の差があります。フォーク側の取付座を座グリするか、もしくはキャリパ側に数mmのスペーサを入れる事で対処する事になります。私は座グリができない環境にある事と、板厚を減らしたくないことから、スペーサで対処する予定です。

●アルミ板にけがく

厚紙の試作で問題がなければ、先の方眼紙の寸法をアルミ板に写し取ってけがきます。基本的には穴位置が正しければOKなので、動かないように方眼紙をアルミ板に固定し、穴位置に上からポンチを打つと簡単確実に寸法を写せます。

本日はここまで.....


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