レーベルゲートCDへの公開質問状

2003/Jan./12

updated 2003/Feb./02



どうもここんとこCDにコピープロテクトをかけようとする傾向が強まっているが、レッドブック(CDの規格書)を読む限りCDの規格にはこのようなプロテクトの設定はなされていない。従って、レッドブックに則らないメディアを作成する以外にプロテクションを行うことは不可能であると認識している。

このレッドブックは日本のソニーとオランダのフィリップスの共同で製作されたものである。従って、日本ではソニーが規格を外れたCDもどきのメディアをリリースする事は、規格上からも道義上からも許される事ではないだろう。

しかし、そのソニーのグループであるソニーミュージックはこのようなリリースを出した。

以下の文章は、上記のリリースに対してワタシが送信した質問状である。


こんにちは、昨今の偽CDの氾濫に心を痛める者です。

●質問の趣旨

御社グループである「ソニー」はCD規格のタイトルホルダーですね。そして本来のCDの規格には、他社のものや今回のレーベルゲートCDも含め、このようなプロテクテッドメディアは設定されていません。

レーベルゲートCDと御社が呼んでいるものは、レッドブックに合致しているものでしょうか?コピーコントロールを行うためにはレッドブックに違反したメディアを作成しなければならないハズです。

規格を管理するべき企業が自らその規格を破り、しかも私的複製の権利を侵害する行為を行う事は、どうみても心ある企業の行う事ではないでしょう。しかも、CDの規格に違反しているものをCDと呼称して販売するのは詐欺的行為でもあると考えられます。

著作物に関する私的コピーの観点から考えれば、本来著作物はコピーできるのが当然で、それを一定期間に限り独占的に取り扱う事で次の著作のための資金を得るようになっているのが基本的な姿かと思いますが、レーベルゲートCDでは未来永劫コピーができない事になり、完全に人権を無視した行為であるとも言えると思います。

また、別の観点でみれば、レーベルゲートCDはパソコン対応という事をうたっていますが、実際にはWindowsしか対応しておらず、実際に音楽を作る立場の方々が多く使っているMacにはなんの対応もありません。まるで世の中にはWindowsのパソコンしか存在しないとでも言うようなこの措置は、世のMacユーザーを心証を傷つけ、特定のOSのみを支持する偏った差別的な措置と言えます。

確かにレーベルゲートCDのようなスタイルで全てのパソコンに対応しようと思えば、例えばLinuxはどうするのかとか他のOSの事も多数考える必要がありますが、そもそもそんな偽CDにしなければ現在でも多数のOSに対応できているのではないでしょうか。

そして、そのような無駄な努力のコストは誰が支払う事になるのでしょうか。やはりメディアの価格に添加されることになるのだろうと想像しますが、ワタシは音楽にお金を支払いたいのであって、そのような無駄な努力にまでお金を支払う気はありません。そのようなコスト効率の悪いものにお金を支払うぐらいなら、御社のCDなど買うのは止め、ライブ等へ通う事になるでしょう。しかし、それでCD売り上げが落ちても、あなた方は「コピーで売り上げが下がっている」と平気で広報なさるのでしょうね。

●質問

・レーベルゲートCDにレッドブック違反はないか?

・レッドブック違反がある場合、それを「CD」と称して販売する事に法律的な問題はないか?

・私的コピーは権利であるが、これを侵害している犯罪行為であるという認識はないか?

・なぜWindowsのみの対応なのか?マイクロソフトから賄賂でも貰っているのではないか?

・レーベルゲートCDの価格は従来のCDの価格と同じか?もし同じなら、アーティストに支払われる金額が減っているのではないか?

●要望

御社に良心があるならば、このような犯罪的な行為をやめ、元のCDに戻す事が可能なハズです。今すぐ方針を改め、元のCDでリリースを継続されるよう希望します。


これに対し、ソニーミュージックは回答はよせては来たものの、その公開は拒み、その内容もまた到底容認できるものではないものであった。現在、回答の公開を要求しているが、それとは別にトピックス的な所だけ書き連ねる事にする。

まず、レーベルゲートCDはいわゆるCompact Discではない。従って、Compact Discを示すロゴは入っていない。これはとりもなおさず詐欺的な商売をしている事を物語っている。なぜなら、Compact Discでないものをレーベルゲート「CD」として販売しているからだ。「CD」という言葉は社会通念上Compact Discを指し示すハズであるから、そうでないものにCDという名前をつける事自体が詐欺的な行為であると考えられるからだ。ソニーミュージックは「レーベルゲートCDには、前述のとおりCompact Discのロゴを使用しておりません」と明言しており、この点での詐欺性は疑いがないように思える。

また、彼らの言い分では私的複製は権利ではないと言い張っている。しかし、そもそも日本国民には自由があり、それを制限する形で著作権法が存在する事を考えれば、その30条で「著作権の制限」をしている事はそのまま「本来の自由を行使してよい」という意味のハズである。むやみに人の自由を奪えない事は周知の事実と考えれば、この時点でレーベルゲートCDは問題アリということになるであろう。

2002/02/02追記:

上記「自由の制限としての著作権法と、その権利の制限」と「CDでないものをCDと称して販売する事の詐欺の可能性」に関するツッコミを行った所、ソニーミュージックは「法の解釈及びご認識の相違」と切り捨て、「通説である法解釈と当社の認識を、誠意をもって既に回答いたしました」と言い切った。

また、彼らの言い分では「既存のDVDやゲームメディアがコピーできない事が違法でないのに「レーベルゲートCD」だけが違法になる根拠がない」だそうだ。でもこれ、そもそも著作権が切れたものは公共の財産になる事を考えれば、自らの権利(利益)のみに固執してそれを妨害している既存のDVD等の方が違法な存在のハズではないだろうか。

結局ソニーミュージックは、「レーベルゲートCD」と称するものがいわゆる本来の「CD」ではない事を認めながら、それを堂々と「問題ありません」として販売する意向のようだ。企業の道義的責任も法的責任も無視しデタラメなものを販売するなら、こちらとしてはこうして自分の考えを公にした上で不買するのみだ。

これを読んだ方がどう考え、どう行動されるのかはワタシには関知できない事なので、あえて不買運動とは言わない。ただ、ワタシはそんな偽者は買わない。

以上


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