CNCを使った既存部品への追加工の方法

ちょっとツイッターで質問があってそれに返答したんだけど、長くなったのでコッチにも転記してまとめておく。

多くの場合、CNCは生板等から部品を削り出す存在なワケだが、場合によっては既存の部品に追加工をしたいコトがある。例えば市販のギアにハブ穴を開けたいとかその手のお話だ。全部を削り出すのは難しいけど、追加工内容自体もそれなりに精度が必要な場合にどうするか…である。

必要なものは、追加工物以外にベース用のアルミ板(ソコソコの厚み…4mmとか)ぐらいかな。場合によってはジグが必要になるかも。あと、工具としてはタップが必要やな。

さて、普通に考えるとCNC上の任意の場所に固定した追加工物の位置や向きなんてわかったもんぢゃないし、仮に強引に決めるにしても、その位置極め(≒原点出し)が超大変ってコトになってしまう。でもちょっと考えてみてほしい。基本的にCNCは制御用のPCと駆動用ドライバの電源が入ったままであれば、なんらかのリセットを行わない限り、座標系を維持したまま作動する。たとえ途中で切削を止めても別のファイルを読み込んでも、電源を切ったり明示的に座標をリセットしない限り、同じ座標のままで動いているワケだ。この追加工方法はそれを利用している。

CAMツールによってやり方は違うと思うが、ヲイラが使っているのはCut2Dなのでそれに沿って説明する。コイツは読み込んだdxfファイルのデータを、全部ではなく一部だけを選択して切削データを作成するコトができる。そこで、読み込ませるdxfファイルの方にちょっとした細工をする。

加工物をベースのアルミ板にネジで固定できる方法を考え、追加工したい穴の情報と一緒に固定用のネジ穴(無論、タップの下穴径)の作図し、一つのdxfファイルとして保存する。こうすると、固定ネジ穴と追加工穴の相対位置は確定するコトになる。こんなdxfファイルをCut2Dに読み込ませるのだ。

そして、Cut2Dを使ってここから二種類の切削データを別のファイルとして保存する。一つ目は固定用のネジ穴のみを選択し作成した切削データ。もう一つは、固定用のネジ穴以外の切削データ(=追加工穴のみ)である。この時、前者はベースとなるアルミ板の厚み、後者は追加工物の厚みでデータを作成する。

CNCにベースのアルミ板を固定し、普通に原点を設定し、まず固定ネジ穴を切削する。切削が終わったら「一切電源を切らず、ベース板も外さずに」それらのネジ穴にタップする。袋穴なので、2番と3番を使うのがオススメ。そして上面を綺麗に掃除し油分も除去する。

で、追加工物をそこへネジ止めする。その際、ベースとなるアルミ板と追加工物の間に両面テープを挟んでおくのも一手だろう。なんせ、動かないコトが肝心なので。固定が終わったら、「Z軸だけ」原点を取り直す。当然、今度は追加工物の上面を原点にする。Z軸調整のためにX軸やY軸を動かす時は、全てPCからやること。一切モータを手で回したりしてはイケナイ。

ベース板に追加工物(この場合は真鍮のギア)を固定したところ。センターに自作のジグスペーサをカマしてネジで固定。さらに、両面テーブでも固定(白い帯状のもの)

無事原点がセットできたら、二つ目の切削データを流す。そうすると、それは固定ネジ穴からみて正しい位置で切削を行なってくれるというワケだ。もし同じ加工を行わなければならない複数の追加工物が存在するなら、この二つ目の切削が終わった時点で「一切電源を切らず、ベース板も外さず、座標もリセットせず、モータを手で回したりせずに」追加工済みの部品を取り外し(当然、外すのに必要な移動は全てPCからの指示で動かす)、新たな部品を固定して、「一切原点を弄らずに」そのままもう一度切削を開始すれば良い。

左がCNCによる追加工後さらに穴をタップ作業してネジ穴にしたもの。右は未加工のもの。

この時は連続して5枚のギアを追加工した。このギアは、右のような形でオムニホイールの駆動ギアとして使用される。ネジは写真の下側から締結され、ギアの上面でツライチになるようにしてある。

追加工物によっては、固定用のジグを用意する必要があったりもするが、基本的に考え方は全て同じである。また、固定用のネジの頭の高さに注意が必要である。なぜなら、複数箇所の追加工にはエンドミルが移動していく必要があり、その時に高さに問題があると固定ネジにエンドミルがヒットして折れてしまう場合があるからだ。この辺もCAMツールで調整が可能なハズなので、チェックが必要だろう。

また、追加工物の素材によっては当然切削条件も変更する必要がある場合がある。まぁ、この辺は今回の手法とは別件のお話ではあるけど、エンドミルを守る上では重要かな。

以上

 

Zak について

基本的にヲタクです。いや、別に萌えとかいうのではなく、ハマるとトコトン進めようとする癖があるので、自制が必要だという…。
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