「時代はアナログ」概論部

序文に続けて、概論部をアップする。実はこの内容を意識するだけでも、ちょっとだけアナログ回路を考える時のヒントになるような内容を含ませたつもり(^_^;)。

細かいノウハウ的な部分が、この後に続いていく予定やな。けど、概論部だけでもテキスト量がこれだけあるんだが…さてこの後どうやってまとめて行こうかね…イラストとかも、未だ未定やし(^_^;;;;)。

●アナログの考え方、概論

アナログ回路の基本といえば、電池に抵抗器を接続してオームの法則で何A流れました…みたいなお話だろうか。たぶん、中学校ぐらいでやってるんぢゃないかと思う。もちろん、これ自体はまったく間違っていないのだけど、実は大きな落とし穴がココにある。

多くの人は、ココから「電圧が主で電流が従」であるかのように誤解してるみたいなんだな。これは大きな間違い。この二つはどっちが主でどっちが従というワケではなく、相互補完のような関係にある。むしろ、アナログ的に考える場合は電流を主に考え、その結果電圧がいくらになるという考え方をするコトが少なくない。

ここではまず、ちょっとした二例を挙げて簡単に考え方を述べてみる。前者は割と簡単な例、後者は少々込み入った例であるが、怖がらずに読んで考えてみてほしい。

【良くある電池と抵抗器の例】

単純な電池に抵抗器ってケースを見ても、実は電圧にも従な面がある。確かに公称電圧は規定されているが、負荷を接続した時点で実際の電圧は下がる。これは、電流を流した為に電池自身の内部抵抗という特性が電圧を下げてしまうからだが、この内部抵抗ってのは別に抵抗器を内蔵しているのではなく、化学的にそういう特性になることを模式的に表現したに過ぎない。公称電圧とは、ある負荷における発生電圧を示しているに過ぎないワケだ。

一方、抵抗器に流れる電流は、その両端の電圧(電位差)によって決まる。電池の電圧が変動すれば、電流も変動する。実際には何アンペア流れるのかというと、先の内部抵抗と合算して計算した値になるワケだが、これも机上のコトであって…と、キリがない。最終的には、まるで勝手にバランスが取れていくかのように一つの値に収束していくワケだけれども、一見単純にそうに見えるコトであっても、実際には結構色々な要素が絡んでくるものだ。

【比較的簡単な半導体回路の例】

例えばトランジスタを用いた基本的なエミッタ接地回路を考えてみよう。トランジスタという素子は、「電流を増幅する」という働きをする。NPN型であればベース端子から流れ込んだ電流(ベース電流)に対し、一定の割合を乗じた値の電流がコレクタから「流れ込もうとする」(コレクタ電流)という動作になっている。エミッタは、ベースとコレクタの両方から流れ込んだ電流の出口(エミッタ電流)だ。その時、一般的なシリコントランジスタにおいては、シリコンPN接合の物理的な特性により、概ねエミッタから見てベースが約0.6V高い電位に「なる」。

奇妙な書き方だと思われるかもしれないが、あえて「流れ込もうとする」と書いたのは、周囲の回路の条件がそれに見合っている場合にのみ実際に流れ込んでくれるからで、そうでなければどんな電流になるのかは分からない。また、「なる」と書いたのは、ここに起電力が存在するわけではなく、正常に動作している状態では概ねそれだけの電位差が発生するという事を示している。逆に言えば、設計時にはその電位差が発生するように回路を組まないと、この回路は動作してくれない。具体的には、何らかの方法でベース端子に対して高い電位の場所から電流を供給する(バイアスを掛ける…と言う)といったコトだ。

またこの時、実は最低限必要な電圧さえコレクタに掛かっていれば、コレクタに流れ込む電流はベース電流によって支配されているので、コレクタの電圧に関係なく同じ量の電流が流れこもうとする。耐圧の問題はあるけど、電圧に依存しない特性を持っているワケで、ここでもまた電流が主として動作しているワケだ。

出力として電圧が必要な場合、コレクタに負荷抵抗を接続し、コレクタに流れ込む電流を負荷抵抗に流すコトで負荷抵抗の両端に電位差を発生させ、それを出力とする。負荷抵抗の値は、電源の電圧、出力したい電圧の範囲、その先の負荷が持つ入力インピーダンス、トランジスタに流せる電流値等で決める。当然、負荷抵抗の値が大きければ小さなコレクタ電流でも大きく電圧が変化するが、その代わり回路から取り出せる出力電流としてはあまり大きくできない。これは負荷抵抗が事実上の内部抵抗になるからやね。

ハナから混み入ってて申し訳ないのだが、本来アナログを考えることは、こういうコトを丹念に考えるコトと思って頂いて差し支えないと思う。そして、適宜その一部の項を省略して考えるコトが多いにせよ、大雑把な全体像を掴んでおかないと困ったコトになるケースが多いように思う。なぜなら、多くのトラブルはその時に省略してしまった項に起因するコトが多いからなんだな。

で、そうすると「ああ、やっぱり面倒なんだ、自分には無理なんだ」ってつい思ってしまうのだけど、実は本質的には非常に単純な(だけど奥が深い)コトを考えているに過ぎない。それは、回路を流れる電流を意識するコト。電流の流れは(向きは逆だけど)電子の流れ。回路を電子の粒が流れているってコトを意識すると、割と間違いなく対処できるコトが多いように思う。ちょっとオカルトチックだけどね(笑)。

(概論部、ここまで)