基板CADの考え方

以前、3D CADに関する基本的な心構えを書いたコトがあったんだけど、どうも今度は基板CADに関する同様のポイントを書く必要が出て来た気がするので、チョイと書いてみる。

●なぜ基板CADが必要か

やはり綺麗な基板を製作するには、CADで作図した方が良いのは自明なんだが、実はそれだけではない。手作業で基板をエッチングする場合は単純に自宅でプリントアウトしたフィルムを使ったりするワケだが、加工機を使ったり外部の業者に基板の製作を依頼したりする場合には、一般に「ガーバー」と呼ばれるファイル群(複数のファイルから構成されている)を渡す必要がある。このファイル群を作成する元のデータとして基板CADで作図するという方法をとる。

多くの場合、基板CADにはガーバー出力機能があって、いくつかの方言(フォーマット違い)はあるものの、それも切り替えオプションなんかで切り替えながら、業者が必要とするガーバーを出力できるようになっている。場合によってはファイル名を弄る必要もあるが、概ねそのファイル群をzipでもして送れば、基板になって帰ってくるという感じだ。

●シンプルなお絵かき型基板CAD

pcbeなんかに代表されるタイプのCADで、いわゆるドロー系(イラレ系?)のお絵かきソフトに基板用の特化機能を付加したようなタイプ。このタイプのCADでは、スタンプ的にフットプリントを設置し、パターンを引いていく。やってるコトは単純にお絵かきオンリーなので、融通は非常に効くんだけど、引いてるパターンが正しいかどうかは本人の確認のみに依存する。

フットプリントってのは、簡単に言えば部品が基板に固定される時に必要な、ハンダするランドの集合体のコト。抵抗みたいな単純なランドならまだしも、ICとかだと規定寸法どおりに並んでいるランドが必要なので、事前にプリセットするような形でランドの集合体を用意してあるコトが多い。もし欲しい奴がなければ、自分で設定するコトも可能な場合が多い。その際は、部品の仕様書を見れば多くの場合で寸法関係の記述があるハズなので、その通りにランドを設定し配置していく。これは次の段落でも同じコト。

●いわゆるEDA系の基板CAD

最近メインになって来ているのはコッチのタイプ。KiCADとかEagleとかやね。これはガチプロでも同様の手順を経て最終的にガーバーを出力するのだが、色々な仕掛けがある分、少々ややこしい。以下、順番に大まかな手順を解説してみる。

1:この手の基板CADでは最初に回路図CADで回路図を描く。当該基板上に存在すべき全ての部品を置き、必要な回路を全て描く。この時注意が必要なのは、ICとかトランジスタ等に関して、ピン番号が適切であること。これが後々非常に重要になってくる。また、可能な限り部品の名前や数値(抵抗値とかそういうの)も書いておく。部品それぞれに、そういったパラメータを設定できる機能があるハズなので、そこに記述していく。単純に回路図上にテキストで描くワケではない点に注意。

なお、使っている回路図CADに必要な部品がない場合、多くのケースでは自分で部品データを作成できるようになってると思うが、ここでもピン番号は非常に重要なので、絶対に間違わないようにするコト。

2:この回路図上の全ての部品に固有の番号(R2とかC4みたいな奴)を設定する。この作業は自動化されていて、コマンド一発でできるようになってると思う。並び順を気にする場合は自分で個別にも設定可能だと思うけど、重複はアウトなので注意する。

3:各部品について、フットプリントを割り当てる。ここが重要な部分なんだけど、回路図には部品のサイズ等の情報は全く無い。したがって、ここで各部品それぞれに妥当なフットプリントを割り当てる。たとえ同じ値の抵抗器でも、リードの有無やSMDのサイズの違いなどで異なるフットプリントを割り当てる必要があるので、結構注意が必要になる。

なお、ここで実はピン番号問題が発生する。すなわち、回路図上のピン番号は、そのままフットプリントに設定されている各ランドのピン番号に対応している。例えば8ピンのICなら1番から8番までのピンがあるワケだが、それが回路図上のピン番号と対応しているので、回路図で間違っていると、基板上も間違ったピンに関連づけされるコトになる。部品の仕様書を良く読んで、間違わないようにしたい。

当然、こっちも存在しないフットプリントは自分で作るコトになるんだが、先の問題があるのでフットプリント内のランドのピン番号には注意を要する。

4:ここまで済めば、ネットリストって奴を生成できる。この作業自体は中間的な作業なので、とりあえず生成するだけで良い。

5:ここでようやくパターンを描くパターンCADへ移行できる。先のネットリストを読み込むと、各部品に割り当てたフットプリントの山が読み込まれる。また、多くの場合各フットプリントのランドの間に補助線が引かれ、その二つのランドが回路図上では接続されているコトを表示するようになっている。この補助線はフットプリントを移動すれば自動的に追従し、実際にパターンを引けば消えるようになっている。

また、基板の外形はここで描画するか、もしくは他からインポートできるハズなので、描くか別途用意してここで読み込んでおく。

あと、デザインルールを決めて設定しておく。これは、パターン幅の最小とか、ランド等とのクリアランスの最小等を決めるようになっており、多くは基板を発注する先の業者がその値を持っているので、それに合わせる。でないと、パターンが切れたり、ショートしたりしてしまう。

6:ここまでやって来て、ようやくパターンを引ける。外形線の内側にフットプリントを移動し、並べ、パターンを引いていく。全ての補助線が消えた時、パターンは一応完成したというコトになる。

つまり、最初の回路図でチェックし、フットプリントの割り当てでチェックし、パターンを引くところでチェックするという多重チェック体制になっている。無論、最初の回路図を間違えればもうどうしようもないが、そこでキッチリチェックしてあれば、ミスはかなり防げる。

7:結構忘れる人がいるが、最後に必ずデザインルールチェックを行う。多くの場合、それを自動で行うコマンドがあるので、ポチっとするだけで良い。文句を言われたら、黙って修正するコト。

8:晴れて問題がなくなれば、基板CADのマニュアルにしたがってガーバーを出力する。後は業者に応じてファイル名の修正等を行い、zipして送りつければ、基板になる。無論、支払いも必要だけど(笑)。

 

ざっと書いてみた。初心者の方の不安が多少和らげば幸いである。

以上

Zak について

基本的にヲタクです。いや、別に萌えとかいうのではなく、ハマるとトコトン進めようとする癖があるので、自制が必要だという…。
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