電動系RC界隈に蔓延る残念なお話

お仕事の関係で色々なお客さんのお話を耳にするのだが、ここ最近非常に残念なコトがある…というか、時代が変わっているコトを理解できていないお客さんが、過去の成功例だけでモノを言うケースを良く耳にする。

かれこれ40年ほど前、RCサーボのトルクが数kgcm程度で、10kgcmもあれば「すげぇハイトルク」とか言われていた頃、そこに流れる電流は高くても瞬間1Aもいかず、定常的にはmAオーダーの電流しか流れていなかった。

そのため、当時の受信器用バッテリは容量も小さく数百mAh程度で済んで(というか、その程度のバッテリしか無かったとも言う)おり、もしくはESC(動力用モータードライバ)が内蔵するレギュレータで生成された受信器用電源程度(せいぜい数A程度の許容量)でも充分に駆動できた。そのため、大抵の受信器の電源コネクタはRCサーボと共通のいつもの3Pコネクタであった。もしくは、同程度の2Pコネクタ(昔よくあった赤い奴)であるコトもあったかな。ESCの場合、スロットル信号の配線を使い、電源をESCから受信器側へ送り込んでるケースが大半やと思う。

あのコネクタ、今もそうやけど仕様上の最大電流値は3A程度しかない。まぁ、瞬間的にはその数倍流してもすぐに壊れるコトはない(なぜなら、それは熱の問題だから)が、その程度のコネクタであるというコトを覚えておいてほしい。

さて…

時代は代わり、今や50kgcmとか70kgcmなんてのがハイトルクって言われるようになってきた。基本的にトルクを生み出すのは電力(=電圧 x 電流)なので、電源電圧が同じなら流れる電流は増える一方というコトになる。

その為、これまでにも電流を減らす目的もあって、かつての4.8V(NiCd 4本直列)から6V(同5本直列)、7.4V(LiPo 2本直列)と電圧を上げてきているが、必要とされるトルクの上昇はそれを上回っている。70kgcmのものは11.1V(LiPo 3本直列)を必要とし、これは多少電流を減らすコトに成功しているが、7.4Vの50kgcm辺りのは凄まじい電流が流れており、瞬間的には8Aとか普通に流れる。これは一般の電流計では一切観測できない。専用の電流プローブを用いてオシロスコープで解析した結果である。そのあたりはこのページにまとめてある。

さて、RCなクルマはさておき、空モノやロボットの場合は大抵RCサーボ1個で済むお話はまずない。昨今の空モノは、固定翼機の大きいものになれば平気で10個前後のRCサーボを用いる。おまけに、飛行スタイルもアクロバティックになっており、全ての舵を同時に扱ったりしている。ヘリにおいても通常4〜5個のRCサーボを使用しており、こっちは今はもう大半がジャイロを使って従来よりも遥かに細かく動作させられている上に、こっちも大抵全てのRCサーボが同時に駆動されている。

既に1個辺りの電流値は述べた。単純に計算した瞬間的な電流の最大値がいくらぐらいになるのかは、誰でも計算可能であろう。そんな電流を流すコネクタが、RCサーボ用のあの小さな3Pコネクタ1個で済むと思っているほうがどうかしているワケなんやが、昔はそれで済んだからと、今でもそのままにしているトコが多い。

特に電動空モノ系のESCは色々とフザケていて、ESCの受信器電源許容量はさすがに批判されたのか今は20A程度の許容量を持っているものの、接続コネクタは通常のRCサーボのコネクタ1本。一応念の為と予備に並列でもう1本用意されていて、2本並列で電源を供給できるとしているが、そんなもの、既にもうなんの役にも立たないコトは明白であろう。

そもそも、こういった「電流が大きめに流れる場所」においては、配線の並列化はその数だけの性能を示さない。配線が2本あるから2倍流せるワケではないねん。なぜなら、それぞれのコネクタのバラつき云々の関係で必ずどちらかに電流が偏るから。せいぜい1.5倍、アカン時は1.2倍程度にしかならん。

しかし、この手のESCメーカーは、過去それで問題が無かったからと、未だにこの小さな3Pのコネクタで電源供給することを厭わない。もしかしたら、それが原因でノーコンになって墜落しているのかもしれないのに。電源が不調になれば、如何に優れた受信器とRCサーボであっても何の役にも立たないのだ。

それでなくてもESC内蔵の受信器用レギュレータはスイッチングタイプであるコトが多く、こいつはほとんど無理が効かない。少しでもスペックオーバーすると、何らかのトラブル(それが瞬停なのか、ドロップダウンなのかはともかくな)が発生する可能性が高いんだわ。下手すると、ソコのトラブルを避ける為にワザとショボい配線にして誤魔化してるんとチャウか?とさえ思える。

エンジン機は別途受信器用のバッテリを搭載するが、そっちはもうとっくにコネクタを変更しており、ディーンズ(最大15A程度)を超え、XT60(最大60A程度)に切り替えている時代なのだ。がしかし、ESCメーカーはその事実を全く理解していないようだ。

で、お客さんも「ESCメーカーがこれで良いと言ってるのだから」と平気でそのままRCサーボのコネクタで電源供給しようとする。挙句に、ESCを使うサイドの一部メーカー側(ハードウエアを理解していない人は残念ながらいる)の人間までもが平気でそう言うのな。物理法則は変えられないのにね。

そんな状態でRCサーボの評価なんかされたら。たまったもんではない。下手すれば、スペック低めのRCサーボのほうが高評価になるワケやからな。ハイスペックのRCサーボの性能は、それに見合った電源があって初めて成立する。電源が貧弱であればそこまでのスペックが出ないばかりか、むしろ劣化する場合だってあるワケで。

ハイスペックのRCサーボを使いたいなら、電動系の機体においてはESCからの電源供給は諦める(=別途受信器バッテリを積む)か、もしくはそういったESCメーカーに文句を言って、配線を改めさせる(=直付シリコンケーブルにXT60とかせめてXT30)必要があると、ヲイラは思う。

あと一つ…

同じお話が受信器系の電源スイッチにも言える。昔ながらの小さなスライドスイッチなんて、せいぜい5A程度が限度であり、限界に近かったり超える電流を流しているとドンドン劣化が進む。そのうち最悪熱を持って焼けたり火を吹く場合さえある。

真面目に数十Aを開閉できる機械的なスイッチってのは、電車の運転席にあるようなゴツい奴であり、当然そんなものを機体に積めるスペースなぞ無かろうし、また重量的にも問題があろう。

従って、バッテリ直結でバッテリコネクタをスイッチがわりにするか、もしくはFET等を使った電子スイッチ(今なら普通に数十A流せるものがある)を使用しないとお話にならない。最近の受信器(特に多チャンネルタイプ)に電子スイッチを内蔵する方向にある理由もコレ。

いつまでも、過去の成功例を絶対視するのはヤメなはれっ思うで。